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2007年01月24日

「ニューヨークで迎えた徹夜明けの朝」

「カンバセーションズ」の試写に行く。
舞台はニューヨーク。
アーロン・エカッート扮する男性の妹の結婚式で元妻とばったり会い、焼けぽっくりに火がつきそうで、結局は火がつかない一晩のお話である。
タイトル通り、二人のリアルな会話を元に物語は進行していく。
一緒に朝を迎え、主人公は自宅に戻り、元妻は現在の夫と一緒に住むロンドンへと戻る。
徹夜明けで別々のタクシーに乗り込む二人の姿を見て、ふと徹夜明けのニューヨークで迎えた朝を思い出した。
それは5年程前、9.11テロの直後にニューヨークを訪れた時のことである。
そのときのニューヨーク滞在はファンクショナルアーティストの福永氏のマンションにお世話になることになっていた。
その家には末期癌の1匹の猫が同居していた。
メールによると、ほとんど眠っていることが多いということだった。
僕が夜遅くに到着した時、その猫は奇跡的に目を覚まし、しかも出迎えるように立ち上がり、玄関までやってきたのである。
見知らぬ来訪者を迎えた後、猫の様子は急変する。
すぐに福永氏とタクシーで動物病院に向かった。
もちろん、既に夜中なので、救急病棟である。
優しそうな女性のドクターが猫をさすりながら、英語で話していた。
英語がわからない僕は、福永氏が泣く背中からドクターの言葉を読み取ろうとした。
どうやら今、注射を打っても持って後1日。
腹水も溜まっているので猫は、ものすごく辛い状態。
このまま天国に行かせてあげた方がいいのではと言っている感じである。
ただ、最終的には飼い主が判断しなくてはならない。
「しばらく考えてみて」
ドクターはそんな感じの言葉をかけて外に出て行った。
沈黙の中、うなだれたままの福永氏、意識不明の猫、会ったばかりの猫を見つめ続けるイシコの3体が無機質な部屋で沈黙の時間を過ごした。
「決められないよ。イシコ、判断してくれないかな」
福永氏が口を開いた。
「え〜、僕が猫の死を決めるのは嫌だよ!」
そう言いかけたのだが、その判断を福永氏ができないのである。
しばらく猫を見つめていた僕は、残り1日の苦痛より、1日早い天国への切符を選んだ。
ドクターは戻ってきて、その旨を知ると正解とでも言うように大きくうなずいた。
動物病院を出ると空は白々と明けていた。
僕には、ほとんど経験することのない徹夜明けの朝だった。
手をあげてタクシーに乗り込むと身体中に鉛がついているような感覚が残った。
映画のクレジットロールを眺めながら、その頃のことを思い出すのであった。

IMG_2804.JPG

建物に太陽が当たり始めて、こんな空だった気がする。

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